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我々の研究室の最近の成果をわかりやすく解説します。

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Hoshino T, Terunuma T, Takai J, Uemura S, Nakamura Y, Hamada M, Takahashi S, Yamamoto M, Engel JD, Moriguchi T.
Genes Cells. 2019 May 29. doi: 10.1111/gtc.12705.

転写因子GATA2とGATA3は内耳に発現していて、ヒトGATA3のヘテロ欠損は聴覚障害の原因になることがよく知られています(HDR症候群)。一方、GATA2の内耳での機能は未解明でした。本研究ではGATA2の様々な遺伝子改変マウスを用いGATA2が内耳ラセン神経節の発生と聴覚の維持に重要であることを初めて明らかにしました。

Moriguchi T, Hoshino T, Rao A, Yu L, Takai J, Uemura S, Ise K, Nakamura Y, Lim KC, Shimizu R, Yamamoto M, Engel JD. Mol Cell Biol. 2018 Oct 15;38(21). pii: e00302-18. doi: 10.1128/MCB.00302-18. Print 2018 Nov 1.

ヒトGATA3のヘテロ欠損は副甲状腺機能低下症、腎泌尿器奇形、感音性難聴を3主徴とするHDR症候群の原因であることが知られています。GATA3は胎児での内耳発生初期から成体の内耳にいたるまで発現が継続しています。この研究ではGATA3の内耳での発現を制御するエンハンサー(otic vesicle enhamcer; OVE)が、Gata3遺伝子の3’下流の571-kbにあることを初めて明らかにしました。さらにOVEの制御下にCre組み換え酵素を発現するトランスジェニックマウス(OVE-Creマウス)を作成し、本マウスが胎児期の耳包(otic vesicle)に由来する全ての内耳組織で、loxpで挟まれた遺伝子座の組み換えを誘導できることを示しました。OVE-Creマウスは内耳特異的なコンディショナルノックアウトマウスをつくることのできる有用な遺伝学ツールとなることが期待されます。

Yu L, Moriguchi T, Kaneko H, Hayashi M, Hasegawa A, Nezu M, Saya H, Yamamoto M, Shimizu R.
Mol Cell Biol. 2017 Oct 27;37(22). pii: e00211-17. doi: 10.1128/MCB.00211-17. Print 2017 Nov 15.

GATA2は成体マウス腎臓の尿細管(集合管)に発現しています。尿細管特異的なGATA2コンディショナルマウスを調べたところ、虚血再還流による急性腎臓病誘導に対して耐性があることがわかりました。マイクロアレー解析の結果、多くの炎症性サイトカイン遺伝子がGATA2の制御下にあることがわかりました。GATA2阻害活性がある既存化合物(ミトキサントロン)を同定し、を本化合物には急性腎臓病予防効果があることがわかりました。

Yu L, Takai J, Otsuki A, Katsuoka F, Suzuki M, Katayama S, Nezu M, Engel JD, Moriguchi T, Yamamoto M.
Mol Cell Biol. 2017 Mar 31;37(8). pii: e00592-16. doi: 10.1128/MCB.00592-16. Print 2017 Apr 15.

GATA1は骨髄球系血液細胞の分化に伴って発現量が上昇する転写因子です。未分化な造血幹細胞ではGata1遺伝子周辺のDNAは高度にメチル化されています。私たちはGata1遺伝子のプロモーター上流にDNAメチル化を司令するサイレンサー配列を見つけました(G1MDR; Gata1 Methylation Determining Region)。Gata1遺伝子のプロモーターからG1MDRを欠失させたマウスでは、造血幹細胞(LSK画分)でGATA1が高発現が誘導され、強制的な赤血球分化と造血幹・前駆細胞の枯渇が生じることがわかりました。G1MDRを介したDNAメチル基転移酵素によるGata1遺伝子の適切な発現抑制制御が、造血幹細胞の未分化性維持と血球分化開始の鍵を握っていると考えています。またG1MDRを欠失したGata1遺伝子座を含むBAC DNAを用いたCreERトランスジェニックマウスを樹立しました。本マウスでは造血幹細胞に由来するあらゆる血液細胞で、タモキシフェン誘導的にCre組み換え酵素を誘導できます。造血系細胞での条件付きノックアウトマウス作成のための有用なツールとなります。

Moriguchi T, Yu L, Otsuki A, Ainoya K, Lim KC, Yamamoto M, Engel JD.
Mol Cell Biol. 2016 Aug 12;36(17):2272-81. doi: 10.1128/MCB.00173-16. Print 2016 Sep 1.

各臓器でのGATA3発現量が野生型の20~40%に減弱したマウスを樹立しました。本マウスの解析からGATA3が腎糸球体メサンギウム細胞に特異的に発現しており、GATA3発現低下によりメサンギウム増殖性糸球体腎炎に罹患することがわかりました。ヒトGATA3ヘテロ欠損によるHDR症候群*でもメサンギウム増殖性糸球体腎炎が高頻度でみられることがわかり、ヒト疾患モデルとして有用であることが示されました。本マウスは理研BRCより分与できます(RBRC09713 )

*HDR, hypoparathyroidism, deafness, renal anomaly syndrome 

 

Takai J, Ohtsu H, Satoh A, Uemura S, Fujimura T, Yamamoto M, Moriguchi T.
Sci Rep. 2019 Oct 30;9(1):15603. doi: 10.1038/s41598-019-51716-6.

ヒスタミン産生反応での律速酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素遺伝子を含む大腸菌人工染色体を用い、ヒスタミン産生細胞がGFP(緑色蛍光タンパク質)で標識された遺伝子改変マウスを樹立しました。このマウスを用いて敗血症時の肺を調べたところ、ヒスタミンを産生する好中球が大量に遊走されてきていることが初めてわかりました。このヒスタミン産生能を持つ好中球の性質を調べることで、敗血症によるARDS (Adult Respirtory Distress Syndrome)の新しい治療法開発につながることが期待されます。